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市民活動をつなぐ「ふらっと」はみんなの居場所 露久保唯さんに聞く

鹿沼市下横町に「かぬま市民活動広場」こと、通称「ふらっと」(以下「ふらっと」)があります。ここには会議室やイベントホールがあり、市民の自主的な活動に利用されています。
この施設は、鹿沼市が市民の交流を通して中心市街地の活性化を図ることを目的につくったもので、筆者は2018年に初めて訪れましたが、さまざまな市民団体の紹介や催し物の案内が配架されていて、「鹿沼にはこんな活動があるのか」と印象に残っています。
 
この「ふらっと」のことを「居場所です」と語るのは、鹿沼市に生まれ育ち、東京の大学を卒業して、今年6月から同施設で非常勤職員として働きはじめた露久保唯(つゆくぼゆい)さん。露久保さんが「ふらっと」と関わったのは、高校生の時、鹿沼市内にある4つの高校の生徒でつくる「高校生まち変プロジェクト会議」(以下「まち変」)に参加したことがきっかけでした。
 
露久保唯さん
▲「ふらっと」について熱く語る露久保唯さん
 
鹿沼市は、自治基本条例でまちづくりへの「子どもの参加」を位置づけ、「市民、市及び議会は、子どもたちを、次世代を担う大切な宝として育てるとともに、地域コミュニティの一員としてまちづくりへの参加の機会をつくり、子どもの意見をまちづくりに反映させます」としています。
 
「まち変」は、条例の「子どもの参加」に基づき、高校生がやりたいことを企画し、実現のために主体的に動き、鹿沼を盛り上げるというもの。高校の生徒会が中心となって、2011年に「高校生アイディア会議」ができたものの、「大人が企画したことを高校生が行う形ではいけない」と、自分たちで資金や活動を決め、自分たちで考えて動いていく「まち変」に発展したといいます。
 
人々をつなぎ、市民活動を支える「ふらっと」について、露久保さんへのインタビューを通してご紹介します。

  
――高校生の時、「まち変」に参加しようと思ったきっかけを教えてください。
部活は吹奏楽部をしていたんですが、これだけで高校生活3年間が終わってしまうのはつまらないと、部活をいったんやめたんです。外部でやれることはないかと思っていたら、学校で「まち変」のチラシが配られたんです。
学校も学年も違う人たちが集まって、一つの目標ややりたいことに向かっていくということに「斬新だな」と思いました。自分が携わることで、後輩に伝えられることがあるんじゃないかとも思いましたね。チラシには活動の事例が載っていたんですが、表紙が「そこの君、メンバーにならないか」というメッセージでインパクトがあり、連絡先が「ふらっと」だったので電話したんです。
でも、このチラシを見て電話をしてきたのは私だけだったらしいのですが(笑)。
 
 
――「まち変」でどんな活動をしたんですか。
1年生の頃は、「ふらっと」に来て活動していたのは、3、4人でした。部活や勉強などで全員が集まる機会はなかなかなくて、「何かしたい」と思っている人たちが携わっていました。
1年生の時にまずやったのは、合同文化祭です。各高校の部活動発表や物品販売をして、農業系の生徒がつくったジェラートやお菓子が好評でしたね。
2年生の時は、鹿沼市の特産品のニラとそば粉を使った新商品「ニラまんじゅう」をつくって、鹿沼市のイベントで販売するという一大企画をしました。そば粉の分量など何回も試行錯誤して、失敗することばかり。鹿沼産のニラも大量に発注しないといけませんが、どこにストックするかなど、悩み、迷いましたね。2日間のイベントで約120個を売ることができて、結果が出た時は嬉しかったです。
 
 
――「まち変」の拠点が、「ふらっと」だったんですか。
はい。「ふらっと」を通じて、ボランティア活動や出張販売、栃木市の高校生団体との交流などイベントがあるごとに活動していましたね。「『まち変』のことを知ってもらわないと、いろんな人たちをまきこめないよな」と思っていましたし、高校生のことを知ってもらって、「こういう人たちも鹿沼を変えられるんだ」と発信していきたいと思っていました。
  
秋まつりでポップコーンを販売する露久保さん(中央)と交流プラザの人たち(2018年)
▲秋まつりでポップコーンを販売する露久保さん(中央)と交流プラザの人たち(2018年)
 
 
――今、「ふらっと」は市民活動のどんな支援をしているんですか。
活動場所としての会議室やイベントホールの貸し出しだけでなく、「今後こういうことをしていきたいんですけど、どうしたらいいですか」と相談に訪れた個人や団体に、活動への助言や協力を行っています。
定期的に「市民活動情報紙ふらっと」を発行し、市民団体に向けた活動情報を発信していて、最近は助成金情報を積極的に載せていますね。
コロナ禍の中、「ふらっと」で何かできることはないかと、オンライン会議ツールの使い方講座や、鹿沼市内の高齢者を対象にしたスマートフォンの使い方講座などを実施しています。

 
――露久保さんはどんなことに取り組んでいるのでしょうか。
鹿沼市環境課と一緒に、地球温暖化防止に向けた国民運動である「COOL CHOICE」の啓発ボードゲームを市内の高校生や他の市民団体の協力を得て作成しています。「パリ協定」で世界の平均気温上昇を2℃未満にすることが決められましたが、すでに世界の平均気温は1.1~1.2度上昇しています。地球温暖化の進行により鹿沼でも豪雨や台風災害が相次いでいます。
そこで、7月から8月の夏休みを利用し、鹿沼市内の高校生に今後制作する「COOL CHOICE」のボードゲームで使うアイディアを一緒に考えてもらいました。このボードゲームは完成後、鹿沼市内の小・中学校に配布し、このゲームを通して一人でも多くの子どもたちに環境問題への関心を持ってもらいたいと考えています。

ゲームを楽しむ高校生たち
▲ゲームを楽しむ高校生たち
 
 
――ところで、東京の大学を卒業して鹿沼に戻ってきた理由をお聞きしてもいいですか。
東京にも楽しい思い出があります。でも、「まち変」を通して活動をしたことがすごく懐かしくて、帰りたいなと思ったんです。「『まち変』で青春していたな」と(笑)。住み続けるとしたら鹿沼だと考えています。
私にとって、「ふらっと」は居場所なんです。最初は高校の時だけの関係かと思っていましたが、いつでも誰でも立ち寄れる場所だから、東京にいた時も鹿沼に帰ってきた際に遊びに行ったり、懐かしい人たちと再会する場であったり、落ち着く場所でした。まさか働く場所になるとは思いませんでしたが、居場所として「ふらっと」は役立つし、他の人たちにも活かされていると思います。
 
 
――コロナ禍で鹿沼の市民活動にも影響が出ていると思います。今後どんなことをしていきたいですか。
今は市民が行動を起そうと思っても動きづらいですよね。でも、いつかイベントをしたいし、気軽に立ち寄れる場だと発信していきたい。
いろんな人がお菓子を持ち寄ったりして集まり、高校生も親御さんも企業も、鹿沼について誰でも気軽に語り合い、立ち寄れる空間をもっとつくりたいですね。
一部の人だけじゃなくて、みんなに「ふらっと」のことを知ってもらいたい。私は趣味でイラストを描いたり、アニメーションをつくったりしているのですが、自分の好きなことを活かして、「ふらっと」をどう発信していこうかと考えています。
「『ふらっと』で私たちが待っているよ」と発信していきたいですね。


▼鹿沼市まちなか交流プラザ
住所:栃木県鹿沼市下横町1302-5
開館時間:午前9時~午後9時
ウェブサイト:https://www.city.kanuma.tochigi.jp/0313/info-0000001287-1.html(新しいウィンドウが開きます)

▼高校生まち変プロジェクト
※2021年10月現在、「まち変」は活動休止中
紹介サイト:https://www.kanuma-flat.org/%E3%81%B5%E3%82%89%E3%81%A3%E3%81%A8%E4%BA%8B%E6%A5%AD/%E9%AB%98%E6%A0%A1%E7%94%9F%E3%81%BE%E3%81%A1%E5%A4%89/(新しいウィンドウが開きます)
 
 
ライター 福田 耕

掲載日 令和3年10月23日

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