条例制定までの経緯
オーバーツーリズム(観光公害)
清流「大芦川」
鹿沼市の西北部を流れる「大芦川」は、上流域に前日光県立自然公園を抱え、「古峰ヶ原高原」や「大芦渓谷」などの豊かな自然に恵まれるとともに、数百年間にわたり広く信仰を集める「古峰神社」や下流域にはオートキャンプも楽しめる「出会いの森総合公園」など多くの観光資源を有しています。
また、春からのヤマメ・アユ釣り、夏季の川遊びや、秋の紅葉狩りなど、市内有数のレジャースポットとして多くの行楽客を迎えています。
川遊び客の大量流入
平成27年頃から、大芦川でバーベキューなどの川遊びを楽しむ行楽客が年々増加していましたが、令和2年から新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う、海水浴場の閉鎖、屋内での3密制限などにより、アウトドアレジャーを求めた大量の行楽客が訪れる事態になりました。
そのため、地域内では、悪質な路上駐車が道路沿いを占拠し、心無い川遊び客による膨大な不法投棄ごみや深夜帯にも響き渡る騒音、私有地への不法侵入などが発生し、住民の暮らしと河川の自然環境が著しく阻害されることとなりました。
大芦川創生プロジェクト(観光公害対策事業)
地域の動き
川遊び客による迷惑行為に対し、地域の皆さんは、令和2年9月に川遊び客対策検討会議を発足し、啓発・清掃活動のほか、新たな臨時駐車場や仮設トイレを設営するなど具体的な対策に取り組んできました。
しかし、大量の観光公害に対し、市内でも特に人口減少・少子高齢化の進む地域の力だけで対応し続けることは非常に困難であることが予想されました。
鹿沼市の動き
こうした地域の実状を踏まえ、本市は、この観光公害を重大な地域課題として捉え、全庁的な取組体制として大芦川創生プロジェクトチームを令和2年11月に発足しました。
プロジェクトチームには、庁内関連部局の担当職員のほか、課題解決に意欲をもった有志職員も数多く参加し、地域とも協議を重ね、様々な取組を実施することとしました。
官民連携事業
令和3年度から令和5年度にわたり、地域や関係行政機関と連携し、様々な事業に取り組んできました。
- 河川パトロール、一斉清掃
- 監視用ライブカメラの設置
- 外国人向け多言語対応チラシ・看板の作成
- 路上駐車禁止区域の指定要望(後日、指定済)
- SNSによる情報発信
- 川遊び客向け臨時駐車場の増設
- ごみ拾いイベント、ワークショップの開催
- ミッション設定型の地域おこし協力隊の募集、活用
- 大芦サポーター(協力スタッフ)の募集、活用 など
これらの取組によって、違法な路上駐車は減少し、臨時駐車場への川遊び客の誘導は進んできましたが、依然として悪質な迷惑行為は後を絶たず、不法投棄ごみの回収量は毎年2トン近くに及んでいます。
条例の制定
令和4年までの取組結果を踏まえ、本市は、事態のさらなる改善のため、これまでのマナーに訴えるだけではなく、ルール化が必要であると判断し、罰則をともなう規制条例の制定を目指しました。
禁止行為や規制区域の設定方法など条例の基本的な考え方について、地域と話し合いながら検討し、令和5年12月に「大芦川流域の生活環境等の保全に関する条例」として制定されました。