モダニズム版画の実験室「前田藤四郎と川上澄生」展(2016.9)
川上澄生美術館では、大阪を描いた版画家・前田藤四郎(まえだとうしろう)(1904-1990)の作品と、栃木ゆかりの版画家・川上澄生(1895-1972)の戦前の作品を紹介する「前田藤四郎と川上澄生―モダニズム版画の実験室―」展を開催します。
前田藤四郎は、大阪の百貨店や広告印刷会社でショーウインドーや広告の制作に携わるかたわら、「リノリウム」という建築材料を用いた版画作品を発表しました。昭和戦前期に百貨店の婦人服売り場やマネキンなどを描いた作品を数多く発表し、都市文化を題材にした実験的で斬新な作品を手がけました。
その前田が青年時代に大いに影響を受けたのが、栃木県を拠点に活動した一回り年上の版画家・川上澄生の作品でした。川上は、宇都宮中学校で教師を務めるかたわら版画制作を始め、1920年代後半には詩と絵が一体となったロマンチックな作品で頭角を表していました。初期の代表作《初夏の風》に見られるように、四角い画面のなかに「モダン」な都市の風景や文化を凝縮した作品は、前田に強い感銘を与えました。
拠点も年齢も異なる前田と川上ですが、二人の作品の華やかな色使いや主題には共通点が見受けられます。前田と川上は直接面識がないものの、ともにモダンな時代に相応しい主題や手法を模索しながら制作しており、お互いの活動を意識していたようです。
このたび、前田藤四郎と川上澄生の戦前の作品、そして前田が愛蔵していたスクラップブックなどの資料を一挙にご覧いただきます。大阪を代表する文化人であった前田の活動を関東で振り返る初めての機会であり、栃木ゆかりの版画家・川上澄生の作品とともにご覧いただくことで、版画家たちの地域を超えた交流について知る手がかりとなります。
モダン文化が薫り立つ作品と、二人の版画家の実験の数々を美術館でお楽しみください!
担当課・問い合わせ先
川上澄生美術館/0289-62-8272